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シリーズ「意見・異見・偉見」

第6章 日本の若者は、海外に出よ!

では、日本の若者が海外で学ぶべきことは?

もう、学ぶべき、なんて言っている余裕はありません。若者は日本にいたら死んでしまうと思います。例えば、パナソニックが全世界で1台テレビを売るごとに、どれだけ赤字が出るか知っていますか? 1台売るごとに、なんと平均して3000円超の赤字を出している。売れば売るほど損害が膨らむんです。そして、パナソニックに限らず日本の家電業界は、全部同じ状況に陥っています。

なぜ、こうなってしまったのか。それは日本の企業が重大なことを見誤った結果です。たとえばシャープは他の追随を許すまいとして、亀山に液晶製造のための大工場を作りました。新興国も10年ぐらいは技術的に追いつけないだろう、産業の空洞化を防ぐためには思い切った投資も必要だ、そんなことを言って大きな工場を作ったんです。ところが、とうてい追いつけないだろうと思っていた韓国の三星、LGや台湾のキューアールにたった数年で追い越されてしまった。きっとそのうち、ベトナムの企業にも追い越されるでしょう。日本人は、相手を見くびっている。相手の発展の速度を完ぺきに見誤っているんです。

日本人が50年かけてやってきたことを、彼らは実は1年で達成できる。そりゃそうですよ。日本人は世界に先駆けて一から技術を開発し、散々苦労を重ねて製品を生み出してきたけれど、彼らは最新の技術をベースに研究し、なおかつ学生や技術者を留学させて、あるいは日本企業のOBを引き抜いて技術を盗むことさえしている。当然発展の速度は50倍です。技術的に追いつかれてしまえば、労働コストやランニングコストが高い、そして円高やTPPさらには電力供給の問題を抱える日本は到底彼らの敵ではありません。

現在、世界で最も利益率の高い家電メーカーは自社工場を持ちません。ブランドとフィールドのみを保持して、製造そのものは、その年に最も安い価格を提示した途上国の企業にOEM生産で作らせている。設備投資をしないから当然利益率は高く、その上がった利益を新製品の開発につぎ込むことができる。

いまや老大国になりつつある日本はこの現実を理解しなければならない。もはや研究開発企業や一部の一次産業を除いて、産業の空洞化を避ける術はなく、日本の若者は仕事を求めて海外に出るしかない。海外で技術開発をしてスタッフを教育し、物を作ってその市場で売る。それ以外、日本の産業が生き延びる方法はありません。

産業の空洞化を食い止めなくてもいいんでしょうか?

産業の空洞化なんて、議論しても意味はありません。自動車業界だって、労働コストやランニングコストの高止まり、決定的な資源の不足、最近では円高にTPP,、電力の安定的供給に関する不安まであいまって、どう頑張っても国内では100万円以下で車を作るのは難しい。それに輸入関税をかけられれば売値が百数十万円になるわけでしょう。それでも今までは欧米諸国に旺盛な需要があったので高級モデル中心の商売で何とかやってこれた。でもこれからは欧米の経済が落ち込み、現代(ヒュンダイ)やタタと張り合って途上国で車を売らなければならない。どうみても、日本で車を作る時代は終わったと考えざるを得ない。

第一、産業が空洞化して、何が悪いんでしょう? 工場がなければ、環境汚染の心配が無くなり、土地の値段が下がる。そしたら皆で一次産業に取り組めば良い。そして海外で働く人は、夏休みに日本に遊びに戻ってくる。あるいは老後を過ごしに帰って来る。それでいいじゃないですか。だいたい日本は、もともと農業大国なんですよ。食料自給率が低いと言われていますが、あれはまったくの嘘です。鶏も豚も牛も穀物も、自給率は90%を超えています。なぜ自給率が低いとされているかと言えば、あれはエネルギー換算で算出されているからそうなっているだけで、日本人が食べている物はほとんど国内で作られています。その証拠に、スーパーで買う野菜や肉、多くは国産ものでしょう? 中国産なんて特に子供を抱えた母親には敬遠されてしまっていて、いくら安売りをしても売れない。日本は古来とても豊かな国なんですよ。きれいな水や空気、大地があり、四季があり、海流に恵まれて豊かな漁場もある。遺伝子の集積度が高く、世界でも最も一次産業に適している国なんです。だから国内では一次産業を振興し、工業は海外でやればいい。日本ブランドの安い海外製品が輸入できるなら、商品だって信頼できるし、誰も困りませんよ。

日本人は、海外でお金を稼ぐのを悪いことと考えている節がある。いや、稼ぐことそのものが悪だと思っている。だから皆喜んで、海外でボランティアをしているんです。ボランティアが美しいと思っている。ODAもしかりです。カンボジアの復興資金、ODAにつぎこまれたお金の46%は日本からのものです。これらの資金は港湾や橋、道路や上水道の整備に使われ、日本はカンボジアの復興に最も貢献していると言えます。ところが今になって何が起きているかと言うと、カンボジアに対する民間の総投資額は中国が75兆円、韓国が25兆円、日本は2兆円に過ぎない。つまり日本が投下したODA資金で整備されたインフラの上に乗っかって、中国や韓国がぼろ儲けをしているんです。日本には何のリターンもない。これは中国、韓国が悪いんじゃないんです。ただ日本が愚かなんです。日本のやっていることは単なるボランティア。だから中国、韓国が豊かになり、日本は斜陽化してしまった。日本はいい加減に目を覚まさなくてはいけない。

「病院」が東北を救う日

3.11の震災後、何度も被災地を訪れた北原先生が、被災地の医療の現状やマスコミと現場のギャップ、復興プランなどについて綴った一冊。与えてもらうことに慣れるのではなく、自らの力で立ちあがるための「真の復興プラン」の具体策も満載。「コンビニの有効活用」「町全体をリハビリ施設にする」などの斬新なアイデアに、度肝を抜かれてしまうこと必至です。