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先輩メッセージ / Message11:TABLE FOR TWO事務局長 小暮真久氏

飢餓に苦しむ開発途上国と、成人病やメタボに悩まされる開発途上国。こうした世界の食の不均衡を解決しようという目的で設立されたのが、NPO法人「TABLE FOR TWO International」。今回の先輩メッセージには、TABLE FOR TWO事務局長であり、社会起業家としても注目されている小暮真久さんが登場。社会起業家を目指す人は必見です!

PROFILE

小暮真久(こぐれ まさひさ)

1972年生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、オーストラリアに留学。スインバン工科大で人工心臓の研究を行なう。1999年、同大学修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社に入社。その後、同社米国ニュージャージー支社勤務を経て、2005年、松竹株式会社に入社。その後、経済学者ジェフリー・サックスとの出会いに感銘を受け、日本発の社会貢献事業「TABLE FOR TWO」プロジェクトに参画。2007年、NPO法人「TABLE FOR TWO International」を創設し、理事兼事務局長に就任。現在、社会起業家として日本、アフリカ、米国を拠点に活躍中。

まず最初に小暮さんが事務局長をつとめる「TABLE FOR TWO(以下TFT)」のコンセプトと、現在のお仕事の内容について教えてください。

現在、世界には食糧難のために飢餓に苦しむ人が10億人いると言われています。その一方で、飽食によって生活習慣病や肥満になってしまう人が10億人います。この食の不均衡を解消しようと言うのが、TABLE FOR TWOプロジェクトの発端です。

具体的には、企業や団体の社員食堂で、TFTのガイドラインに沿ったメニューを提供してもらうというのが事業内容。そのメニューの代金の中には寄付金20円が上乗せされており、アフリカの子どもたちの給食費にあてられるというしくみです。20円というのは開発途上国の1食分の給食費に相当するので、TFTメニューを1食食べれば、その人は自動的に開発途上国に1食分寄付したことになります。またTFTのメニューとして提供するのは、通常よりもカロリーを控えたヘルシーな料理。つまりTFTのメニューを選べば、体重コントロールをすることもできます。一方的に寄付をするのではなく、参加者自身にもメリットがあるというのが大きな特徴です。

僕が行なっているのは、このTFTプロジェクトをいろんな団体に広めていく活動。これまでは企業や団体の社員食堂が中心だったのですが、おかげさまで昨年の夏からは、コンビニやレストランなどでもTFTメニューが発売されるようになりました。

いつ頃から、こうした社会に貢献する仕事に就きたいと思うようになったのですか?

はっきりと認識したのは、大学院生のときです。当時、私は人工心臓という臓器の研究をしていまして。患者さんの反応を通して、人から感謝されることの素晴らしさを感じるようになったんですよね。そこからしだいに、「社会に役に立つようなこと」を自分の生きる軸にしていきたい、と考えるようになりました。

小暮さんは人工心臓の研究のために、オーストラリアに留学されていたそうですね。研究以外のことで、海外生活の中で得たものはありますか?

ひとつは英語力ですね。僕の場合、研究でも英語を使っていたので、日常会話だけでなく専門用語も含めて、英語にどっぷりつかることができたんです。英語が自分の武器になったのは、やっぱり留学のおかげだと思いますね。それからアジアの文化圏を出て異文化に触れることができたというのも、僕にとっては大きな体験でした。もちろん最初は大変でしたよ。研究グループの中にはいろんな国の人がいて、働き方に対する考え方もなかなか噛み合わないんですよね。でもそうした体験が、あと後いろんな文化圏の人と仕事をする上で、非常に役に立ったと思います。

海外から日本を改めて見て、日本に対する思いや印象は変わりましたか?

ええ。僕はオーストラリアに出て行った当時、日本が嫌いだったんです。なんだか日本は息がつまるような感じがして。それで僕は、オーストラリアでも、あえて日本人がいない研究室に入ったんですよ。でも日本人がひとりなものですから、他の国の学生たちに、いろいろと日本人として試されるんですよね。とにかくいろんなことを聞かれるので、僕は代表として答えなくてはいけない。そうして説明していくと、どんどん自分の中で意識が変わるんですよ。不思議なもので、なんだか自分が日本をプレゼンしているような感覚になってくるんです。

それに僕がやっていた技術系の研究の世界では、やはり日本に対して評価が高いんですよ。日本人の技術者でないとできないような人工心臓の型もあるし、日本に対して期待も高い。その一方で、人工心臓のような社会的に意義があることを商売ベースに乗せるのは、日本はとても下手ということを実感しましたね。

帰国後は研究の道へと進まずに、外資系コンサル会社のマッキンゼー、それから松竹にお勤めしていたんですよね。こうした企業で得たものはありますか?

マッキンゼーで得たものの中で一番大きいのは、やはり考える力と問題解決能力。社会事業は、何もない場所からいろんなものを作っていく仕事。そういった事業を手がける上で、マッキンゼーで培った考える力は非常に役に立ちました。それから松竹は、すごく日本型の企業。TFTの事業を展開する上で、ドメスティックな企業での実地体験があるというのは、自分にとっても良いことでしたね。

こうした企業で働く上で、海外生活の経験が役に立ったことはありますか?

マッキンゼーでは外国人とチームを組むことが多かったので、そういったシーンでは海外生活の経験を生かすことができました。僕が留学時代にいたメルボルンというのは、オーストラリアの中でも人種が多様なところ。イタリア系の人もいれば、ギリシャ系もアジア系もいる。マルチカルチャーの中で何かをするというのは、僕の中では既に慣れたことだったんです。でもマッキンゼーに入ってみると、意外とそういうことが得意じゃない日本人が多いんですよね。僕はまったく平気だったので、何カ国かのオフィスが共同でやるプロジェクトにも入れてもらうことができたし、そういう意味では海外生活が役に立ったと思います。