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先輩メッセージ / Message22:チアリーダー 中山麻紀子さん

チアのパフォーマンスとビジネスとの共通点はどこにあるのでしょうか?

相手が喜ぶということが、自分たちのプラスでもあるということです。たとえばチアをやっている人にとって、見ている観客達が拍手をしてくれるというのは、とても嬉しいこと。ビジネスも、クライアントが喜んでくれれば、自分たちの売り上げもあがる。それがまず第1の共通点ですね。それから楽しい職場であることが、一番成長につながるというのも共通していると思います。

子供を指導する時と大人を指導する時に、違いを感じることはありますか?

いや、ほとんど同じです。しかも、時には子供のほうができたりします(笑)。子供たちは恥ずかしがらずに何でも言うので、新しいアイデアがどんどん出てくるし、私自身もたくさん学ぶことがあります。ところが大人は、「恥ずかしい」「言いづらい」などとためらうので、何も新しい発想が出てこない時があります。

ジュニアのチアスクールの生徒は何歳から何歳までなのですか?

3歳半から15歳までです。先日も、全国から生徒約100名を募って、ラグビーの試合で踊ったんですよ。ところが入場する時に、3歳半の女の子が転んじゃって泣いちゃって。演技のときも、ずっと泣いたまま。その後、仲間のお姉さんに助けられながら、1日過ごしていました。ただ試合が始まってから終わるまでは「メンバーですべてやりますから、お母さんは入らないでください」という風に決めていたし、その子も「お母さん」とは言いませんでしたね。チアスクールでは、基本的に何でも自分たちでやるという教育をしているので、子供たちもそういう意識が身についてきているのだと思います。

チアリーディングを通して、素敵な女性になるためのマナーや心構えを教えていらっしゃるんですね。

そうですね。チアとダンスは教えるツールとして使いますが、本当に教えたいのはハートの部分です。ですから私のスクールでは、チアリーディングではなくCheeRingという言葉を使っているんです。応援する=Cheerの現在進行形と輪=Ringをかけたオリジナル用語です。競争や上手になることを目標としているのではなく、元気の輪を広げたいという思いです。

子供たちの変化は見えますか?

わかります。ただ、家に帰ってからのほうが違うみたいですよ。いろいろと話してくれるようになったりとか、泣かなくなったりとか。それから家で「お母さんを応援しているよ」ときちんと伝えているお子様もいます。

レッドスキンズ時代も子供を指導されていたそうですが、日本の子供たちと向こうの子供たちの違いはありますか?

日本の子供たちは、もっと自由な発想力があってもいいと思うことがあります。たとえば、音楽をかけたときに、日本の子供たちは音楽やリズムって踊ることが苦手です。「好きに踊っていいですよ」と言っても最初は「え~。わかんな~い」みたいな感じです。それから日本の子供たちはとても恥ずかしがり屋です。向こうの子たちは本当に自由に踊りますからね。ただし彼らは言うことは日本の子供達より聞きません(笑)。だからアメリカから先生を呼んでキャンプなんかをやると、外国人の先生は「みんなきちんと聞いてえらいわ」って言います。ただ、それで日本人の子供たちができているかどうかは別。向こうの子はすぐにできることが、日本人の子にはできなかったりします。でも、とりあえず言うことは聞くんですよね。

中山さんは日米リーダーシッププログラムにも参加されたそうですが、これはどういうものなのですか?

日本から約30人、アメリカから約30人、ヤングプロフェッショナルたちが選考され、年に1度、1週間合宿して今後の日米に関するいろんな議題について話し合うというものです。話すトピックは、教育や政治や環境など、多岐にわたります。政治家の方や官僚、会社のトップの方など、参加している方もさまざま。そこに参加することで、アメリカ人も日本人も含めて、たくさんの友達ができたというのは大きな実りでした。

それからこのイベントで、私の生徒たちもパフォーマンスをしたんですよ。海外の人に会ったことがない子もいたのですが、実際に外国人と話すことで、子供たちも海外に目が行くようになったみたい。スクールの子供たち自ら、「私は将来ヨーロッパ校の先生になる!」「私はアジア校の先生になる!」と言ってくれています。

子供たちや社会を元気にしたい、というような気持ちはどこから生まれてきたのですか?

チアリーダーってまさにそういう応援をする存在ですが、それに対して意味を持たせたい気持ちからです。ただ、ここを間違えてはいけないな、と思うのは、チアリーダーとして、giveする場所や人を見極める能力も必要だと言う事です。例えば私が教えている学校もなんですが、私は教える立場で貢献をしているけれど、きちんと学ぶものもあります。それを何かにつなげていくのは、結局自分次第。私は特別教育が必要な生徒を受け入れているインターナショナルスクールInternational Secondary Schoolでもダンスを教えていますが、障害のある子から素晴らしい発想が出てくることもある。そしてその才能を見つけることが、私自身の発見につながることもある。だからある意味、私がやっていることはgive and takeなんだと思います。もちろん貢献ということは考えているけれど、それがリングとなって自分を含めたいろんな人の間を回るようにすることが自分の夢なんです。

International Secondary Schoolで教えることになったきっかけは?

最初に、教育者でもある学校のオーナーから「こういう子供たちがいるのだけど教えてみない?」というオファーがあったんです。そこで教えることで、本当にこの子たちはすごい、というのを発見して。最近は、自閉症児に対して笑顔やいいエネルギーがどのようないい影響を及ぼすか興味を持っているんです。先日も、ボストンにある自閉症児が寄宿している学校に見学に行ったのですが、彼らの笑顔やエネルギーが本当に素晴らしい。だから、そういった方面の研究もしたいと思っているんですよ。

これから海外に行こうとする若者にアドバイスをいただけますか?

海外へは、目的や夢を持って行った方が、得るものは大きいと思います。もちろんそれが見つからないという子もいますよね。そういう子は、とにかく何でもやってみようとする姿勢が大事だと思います。そこで「私はどうせダメだから」と言ってしまったら、たぶん一生何も学べません。

たとえば私は、オレゴンへの留学時代よりも、今の方が英語はできます。それはなぜかと言うと、レッドスキンズ時代に「はい、マイク持って行って来て」と言ってステージにいきなり立つ、、という経験を経たからです。それから基地への慰問では、兵士の方を元気づけるために話しかけたりすることもありました。その時は、何としてでも、この人を楽しませようと、という気持ちでした。そういうときに英語がたどたどしいと、楽しませる事が困難な時があります。また、教育のない、単なる華やかなチアリーダーと見られるのではないかと、仲間が発音など、特訓してきた事もありました。「頭が空っぽ」と思われるのはチームの恥ですから、きちんとした英語をしゃべろうと努力もしました。とにかくやってみようと頑張ったことが、急成長に繋がったのかと思います。

留学を目指す若者の中には、中山先生のように子供たちに何か教える立場になりたいという人もたくさんいます。そういう若者たちが、何か身に付けておいたほうがいいことはありますか?

子供たちに教えたい何か強い芯があるからやるのか、それともビジネス(お金儲け)がしたいからやるのか、ということがはっきり見極めることですね。ビジネスを先に考えている人は、子供たちにも言いたいことが伝わりづらいです。私の周りにいる人でも、「この素晴らしいことを教えたい!!」、と思っている人たちが成功しています。だから何を教えたいのか、ということを見つけるのが先決。社会的または世界的に見て、なぜそれが子供たちに必要なのかを考えて、教えたいことを探してください。単にビジネスをやりたいというのも一つですが、「教える」ということは、「伝える」こと、でもありますから、それに対しての理解と情熱は必要不可欠です。

最後に、今後の目標を教えてください。

CheeRing (チアリング)を、もっといろんな人たちに広げて行くのが目標です。たとえば、チアを通してビジネスマンと子供たちを結びつけたり、特殊学校の生徒と普通の学校の生徒を結びつけたり。実際に日米でビジネスマンと子供たちを集めたイベントをやったこともありますが、大きなビジネスマンと小さな子供たちが一緒に踊ろうとすると、大きなビジネスマンはしゃがまなくてはいけません。ビジネスマンはチアを通して、知識のない部下と話す時には、レベルを合わせて話すというような姿勢を学ぶことができると思います。単純なことですが、そこを考えることのできる余裕を持っていることは大切なことです。チアをいろんな人に広めて、CheeRingをいろんなシーンに浸透させていくのが私の目標です。

インタビュアー:株式会社エストレリータ代表取締役社長:鈴木信之

ライター:室井瞳子

PHOTO:堀 修平