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渡航者体験談 / vol.23

自ら自分を変えるためにアクションを起こし、様々な出会いが生まれ、最高のドラマを作れました。

私の留学のきっかけは、ある方との出会いからスタートしました。前職の会社で人事採用担当の仕事をしていた際に、現場の社員の方と一緒に仕事をする機会があったのですが、そこでとても魅力的な先輩に出会ったのです。飲み会でその方と話を色々すると、その場ですぐに打ち解けることができ、簡単に親密な関係を構築することができました。「なんて寛大でポジティブで人を惹き付ける人なんだろう」と思い、今までの経験を聞くと、その方はワーキングホリデー経験者でした。"海外での様々な経験が人を大きくさせる"。そんな印象を持った私は、当時、日本の未来や自分自身の未来に不安を感じており、自分自身に完全に自信を失っていたこともあり、何か自ら自分を変えるためにアクションを起こさなくてはならないと奮起し、気が付いたら留学エージェントの門をたたいていました。

そこで出会ったカウンセラーの方が、その先輩と同じようにキラキラと輝いている方で、「やはりこれが海外の力なんだ」と率直に思いました。色々な友人に20代最後のチャレンジとして海外生活の話を相談すると、「何しに行くの?」「行って意味があるの?」と言われ決断に迷いがありましたが、その先輩と同様、このカウンセラーの方の人間力と魅力がきっかけで行くことを決意しました。

そこから出発まで全く不安が無かったかと言えばうそになります。出発ギリギリまで「この決断で正しかったのか?」という思いが頭から離れず、何が起こるかわからない真っ白な状態から自分で目標を設定しスケジュールを組み立てることは容易ではありませんでした。特に、帰国後の再就職のことを考えると不安しかありませんでした。ただ、決断をした以上誰にもできない経験値を得たいと思い、相談や情報収集を繰り返し、たどり着いたのが、現地の会社で働くことができるインターンシップでした。そして、そのインターンシップの専門学校であるGastown Business Collegeの存在です。「絶対にこの学校に入学してインターンをするぞ!」という目標を自ら設定し、期待と不安の中、まずは英語力向上のためにトロントに飛び立ちました。

大学生の時に1ヶ月間バンクーバーに短期留学していた経験もあり、現地での生活に対しては抵抗無くイメージはできていたのですが、やはり英語力には自信が無く、綺麗な英語を喋りたい!ネイティブ並みに喋りたい!っという思いが先走りすぎて思うように会話ができませんでした。そして、社会人を数年経験しているせいか"間違えること"、"恥をかくこと"を恐れていました。そんな自信の無さからかホストファミリーともなかなか自分の思うことを表現できなくて、「もっと勉強しなさい!」っと多々言われ、更には日本のことを英語で質問されても返答することができなくて、「あなた日本人ではないわね!」とも言われました。ショックでしたが、これがきっかけで"綺麗な英語を喋る"という考えを捨て、"間違ってても良いからまずはアウトプットしてみる"というスタンスに切り替えました。それが功を奏したのか、2ヶ月程して英語に慣れてくると自然とホストファミリーとも会話が増えるようになり、コミュニケーションすることが楽しくなってきました。このホストファミリーの家を離れる最終日には、日本食を作ってパーティーをしたのですが、みんなとても喜んでくれて、「You are good man. You are my family. You have to come back here.」と言ってくれました。まさに言葉以上に"伝える大切さ"や"わかり合うことの大切さ"を学んだ瞬間でした。

そんなトロント生活の第1週目に、とてもびっくりした出来事がありました。今回の目的である、インターンシップを通したキャリアアップを現地カウンセラーに相談したところ、やはりバンクーバーのGastown Business Collegeを推薦して下さったのですが、この学校の英語力推奨レベルがTOEIC650点以上。出発前のスコアが365点。到底今の英語力では受からないと思っていました。ところが、カウンセラーの方が私の英語の会話を聞いていて、「裕介さん、ちゃんと会話できているから大丈夫だと思うよ。」と言って下さり、即電話での英語のインタビューを受けることになったのです。自信はありませんでしたが、躊躇は全くしませんでした。当たって砕けろという気持ちでインタビューに臨み、結果を待つと、なんと結果は"一発合格"だったのです。思わずガッツポーズでした。当初目標としていたインターンシップがこんなにも早くできるとは思ってもいなかったのです。その時私はこう思いました。『TOEICは英語力を測るひとつの物差しでしかなく、最も大切なことは英語を使ってコミュニケーションができること、つまり英語はコミュニケーションのツールである』と。私はすぐにバンクーバー行きのチケットを購入し、トロントでは英会話力向上にフォーカスを当て、2ヶ月半ESLに通いながら生活をしました。

トロントでのESLを終え、バンクーバーのGastown Business Collegeがスタートすると、内容は本当にハードで毎日宿題がどっさり。毎日放課後教室に残り、更にはカフェで宿題を毎日5~6時間行っていたのを今でも覚えています。しかし、この学校のカリキュラムは今までのESLとは大きく違いものすごく実践的。自己分析、プレゼンテーション、レジュメの作成、インタビューの練習、カナダ企業の文化やマナー、電話の掛け方、メールの送り方などを全て英語を使って行います。就職活動そのものを全て英語で行うという今まで体験したことがないプログラムでした。もちろん、校内は英語のみ。母国語を使用すると退学になります。更には、先生との連絡や報告、相談も全て英語。まさに私が求めていた環境そのものでした。
そして、何よりも素晴らしかったのは、この学校の生徒たちです。この学校は日本人と韓国人しか受け入れていないので、クラスには日本人と韓国人のみ。当然、はじめはお互いに牽制をし合い、クラスが割れるのではないかと心配したくらいでした。そこで、休日にみんなを集めてFood Exchange Partyを企画したのです。幸いにもお互いに食文化は興味があるので、日本人は日本食を提供し、韓国人はコリアンフードを提供するという形で実施をしたのです。実際に行ってみると、全員がSelf-starterで、自分の役割を自分自身で見出し、各々が協力して料理を作っていく光景がそこにはあり、感銘を受けました。会話は全て英語ですが、英語で会話をするだけでなく、お互いの言語を教え合うという新しいコミュニケーションもそこに自然と生まれており、おかげでこのPartyの後にはクラスの団結力が生まれ、お互いがお互いを尊敬し合える素晴らしい仲間(同志)に変わっていました。
プログラムの1つとしてチームプレゼンテーションの課題が与えられた際には、すぐにチームが集まり内容、コンテンツ、役割、スケジューリングを話し合い、方向性を決めることができました。また、インターンシップのインタビューの際にはみんなで励まし合い、合格した際にはまるで自分のことのようにみんなで喜び合いました。私は元々人事採用担当でしたので、素直に「こんなメンバーを採用したい」って思ってしまったくらいです(笑)。 この学校の卒業日に、最後のPartyを開催したのですが、その際にクラスの韓国人の友人にこんなことを言われたのを覚えています。「裕介、一番大切なことは英語力では無いね。人間力だね。それをあなたから学んだよ。裕介がこのクラスを引っ張ってくれて本当に良かった。ありがとう。」と。私はこう言いました。「お礼を言わなければならないのは僕の方だよ。みんなが僕に色々なことを気付かせてくれて、みんなのお陰で再び自信を取り戻すことができた。本当にありがとう。今後一生友達でいたいね。」と。
空港でクラスメイトを送迎した際には、涙が止まりませんでした。お互いに解り合える友人が世界にいる誇りと喜びは言葉では表現できません。彼らといつか一緒にビジネスをしたい。なんて素晴らしい仲間に囲まれているのだろうと思った瞬間でした。

学校の座学のプログラムが終わると、いよいよインターンシップ探しがスタートします。この学校では、インターンシップコーディネーターからの推薦を受ける方法と自らテレアポでインターンシップ先を探し出すコールドコーリングという方法の2種類を同時並行で行います。私がコールドコーリングでリストアップした企業は135社。電話でアプローチをし、インターンシップの受け入れの有無を英語で確認していきます。前職にて営業の経験もあり、このようなテレアポは冷たく対応されるのではと思っていたのですが、思った以上にカナディアンは丁寧に断ってくれますし、冷たく切られるようなことは少なかったです。
また、インターンシップコーディネーターとは何度も相談や調整を繰り返し、インターン先の推薦を受けるのですが、幸いにもその時に日本のプロダクトを探している中国系Trading会社が日本人を探しており、コーディネーターからインタビューの機会を頂くことができました。結果は合格。職種はプロダクトマーケティングでした。実はこの時にコールドコーリングで獲得した別の会社のインタビューが合格しており、どちらを選ぶか悩んだのですが、最終的にはTrading会社を選択しました。理由は、別の会社の方は、私のWeb構築経験を買って下さっており、同じような仕事を英語で行う職の内容だったのですが、今までやったことがあることをやるよりは、やったことがないことを選択したいと思ったからです。もちろん、この選択が間違ってなかったことは言うまでもありません。

さあいよいよ待望だった現地でのインターンシップがスタートです。このTrading会社での仕事の内容は、カナダにある日本のプロダクトを扱う卸売業者のリストアップとコンタクト、プロダクトのアイデア出し、パッケージデザイン考案、英語⇔日本語の語訳等です。もちろん日本人は私のみ、完全英語環境です。職場の社員は中国系カナダ人。全てを英語で意思疎通しなくてはなりません。初めは苦労の連続で、何を言っているのかわからないことが多々。しかし、職場の社員の方々はみんな暖かい人たちばかりで、聞き返せば必ず具体的に説明してくれますし、わからないことも丁寧に教えて下さいました。特にこういう第一言語がお互いに違う環境においては、わからないことは素直に"わからない"と言う事が大切で、言わないとお互いに理解しているという誤解が生じる可能性があります。日本人は人に"わからない"と正直に言えない人種です。To be honest、Open mindでいることがカナダでの成功の鍵だと確信しました。
この会社でインターンをしていたある日、ちょっとしたハプニングがありました。この会社の社長が日本のプロダクトを探しに幕張で行われるFood Exhibition(展示会)に偵察に行っていたのですが、その滞在先にいる社長から社員に対してお怒りの電話が入ったのです。どうやら日本のホテルの予約で何かミスがあったようなのです。しかし、その社員は何が問題だったのか全く理解ができなかったみたいだったのです。そこで、私が日本のホテルに直接電話をし、原因が何だったのか確認をしました。原因はなんと勘違い。ダブルベッドという表記は、日本では大きなひとつのベッドと認識されていますが、この社員はベッドが2つあると勘違いされていたようです。そのことを英語でその社員に説明すると、すぐに理解をしてくださり事無きを終えました。その社員からは「Yusuke, Good Job! You solved this problem. Thank you.」と賞賛され、「You are Gentleman」とまで言って下さいました。
この経験も含め、この会社でのTradingビジネスが私に次のことを気付かせてくれました。「異国で外国のカルチャーに交じって仕事をすることは確かに大変なことではあるのですが、逆に日本人であることが強みになる。英語だけでなく日本語が使えることが武器になる。かつ日本のカルチャーで育っている日本人というブランドがビジネスにおいて強みになる。」と。このインターンシップに出会えたことは私にとってある意味で運命であり、ターニングポイントだったと思っております。

このインターンシップ終了後、残り半年間のワーキングホリデーVisaを利用して今度は自らの力で仕事を探そうと試み、約5,60社の会社にApplyをしましたが、なかなか思うようにチャンスを得ることはできませんでした。しかも現実面として書類が通って面接に行っても、Visaのステータス(Visaの長さ)で雇用できないという会社もいくつかあり、現実の厳しさを感じました。
そんな時に、Gastown Business Collegeの韓国人の友人からある方を紹介されたのです。それは、語学教育にフォーカスを当てたカナダのソフトウェアベンチャー企業のプロジェクトマネージャー(以下PM)でした。この会社は、留学生と語学学校を直接結ぶSNSのようなサイトを構築している最中で、そのプロジェクトに参加しないかというお誘いでした。私は本当は給与をもらえる仕事をしたかったのですが、このような機会をもらえることも多くはないので無給でも参加を決めました。しかし当初、仕事の内容が単純作業が多く、自分のキャリアアップにならないと思うことが多々あり、一度脱退しようかと思うことがありました。それは明らかに与えられた仕事をただこなすだけの作業でしかなかったのです。これではお互いにとって良くないと思い、思い切ってPMに相談をし、別のポジションを提案したのです。そのポジションはJapanese Marketing Representative。日本人だからこそできる日本のマーケット開拓です。私は、Web構築経験を活かして、このSNSを日本人をターゲットにどのように発見して興味を持ってもらうかを考え、Web広告の媒体選定や作成を日本語と英語で行い、データ分析や検証まで行いました。また、日本の留学市場の動向やトレンドの記事を見つけては、PMに日本語を英語にして共有し、日本人の傾向や文化、考え方等を伝え続けました。その結果、短期での成果には結びつきませんでしたが、以前よりも日本人のPage viewが数倍になり、日本人に少しでも興味を持ってもらうきっかけを作ることができました。 一番伝え難かったこととしては、日本人は新しいビジネスには警戒心が物凄く強く、大手・ブランド志向が高いということ。これをPMに理解してもらうためには言葉だけではなく、数字としての実態がどうしても必要だったのです。そして、海外経験者ではない一般の日本人には日本語で表記しないと信頼を得られないということ。それも最終的には理解してくれるようになり、「裕介に出会えたことは本当にラッキーだった。たくさんのことを学んだよ、ありがとう。」と言われました。PMと強固な信頼関係を気付くことができた最高の証でした。
結果的には、投げ出さずにこのプロジェクトをやり続けて良かったと思っています。与えられた仕事をただこなすのではなく、自らの強みや経験値を最大限に活かしてできることをする、それが結果的に貢献に繋がる。それを学べるいい機会だったと思っています。あの時に脱退していたらきっと後悔したでしょうね、きっと。

ここに書いた経験は、1年間の海外生活においてほんの一部に過ぎません。この1年間を振り返ると1つ1つの経験が本当にドラマチックでした。ただ、そのドラマチックな演出を私に与えてくれたのは、現地で出会った素晴らしい人たちのおかげです。この素晴らしい仲間や同志、友人、Mentorが私に様々なことを教えてくれましたし、支えてくれました。一言では感謝の気持ちを表現できません。
私が改めてこの海外生活で感じたことは、人生は誰と出会うか、つまり「人の出会いで自分の人生が大きく変わるし、変えられえる」ということ。今までの生活をしていたら絶対に出会えなかった全世界の人たちに出会えることが海外生活の醍醐味だと思います。そして、英語という言語はその人たちに出会うためのただのツールであり、プレリュードであるということ。留学と聞くと大半の方は英語にフォーカスがいくのですが、英語以上に大切なことが現地にはたくさんあります。それを是非とも肌で体感して頂きたいですね。
私は、カナダ人のあるMentorからご紹介を頂き、海外で働けるチャンスを頂き、チャレンジする予定です。はっきり言ってラッキーとしか言いようがありません。しかし、よく友人に言われますが、「ラッキーも実力のうち」であり、そのラッキーも海外生活を決意しなければ得られることはできませんでした。 「ポジティブな考え方をすれば、ポジティブなことが本当に起きる。」と私は信じています。 これから海外生活に挑もうとされている皆様には是非ともこの言葉を胸に、自分だけのドラマを作ってきて欲しいと思います。ご自分の人生を活かすも殺すも自分次第です。
もし、現地で私を見かけるようなことがありましたら、是非とも気軽に声をかけてくださいね。

田中有梨子さん
名前 武居裕介さん
渡航先 カナダ トロント・バンクーバー
渡航期間 2010年9月~2011年9月
渡航目的 キャリアアップ
インターンシップ
ビジネスチャンス
新しい自分探し
自信を取り戻す