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渡航者体験談 / vol.14

日本人がいないカナダの小さな田舎町そこでの出会いが私を大きくしてくれた

私が留学をしたのは、カナダにあるクランブルックという小さな町。この町の名前を耳にしたことがある方はそういないと思います。人口2万人に満たない町で、道を歩けば同じ人に2回以上会うこともざらにあるような田舎です。一般的にカナダ留学と言えば、バンクーバーやトロント、オタワといった大都市が人気ですが、そうした都市部にはアジア人留学生が多く、街中では普通に日本語が聞こえてくる状況。私はせっかく留学するのであれば、日本人、日本語のない環境に身を置きたいと思い、日本人がいない場所にある学校を重点的に探していました。そこで出会ったのが、まったくと言っていいほど日本人がいないクランブルックのカレッジ・オブ・ザ・ロッキーズだったのです。

カレッジ・オブ・ザ・ロッキーズは名前の通り、山の中にある小さな学校。インターナショナルの生徒もいますが、都心の学校に比べるととても少なく、みんなと触れ合うことができるアットホームなスクールでした。最初は自分で選んだ日本人ゼロという過酷な状況に負けそうにもなりましたが、地元の人の温かさや優しさのおかげで、乗り越えることができました。これも小さな町だったからこそだと思います。

人と会話することが何よりも好き!という性格の私は、学校のない週末も、家でじっとなんてしていられません。地域のボランティアに参加したり、ベビーシッターの仕事をしてみたり。毎週日曜日に行っていた教会では日曜学校のヘルパー先生を務めるまでになり、学校以外でも本当に充実した日々を送ることができました。これらの活動に参加するときも、私は日本人の友達と一緒に……ではなく(笑)、自分が興味のあるものであれば、たとえ一人であっても挑戦しました。今考えると、ここで出会った人との触れ合いが私を何倍にも大きく、そして強くしてくれたのだと思います。もちろん、カナダ留学の間にできた日本人の友人との関係も、とても素晴らしいものではあります。しかし自分とまったく異なる文化圏の人たちとの触れ合いというものは、より自分の考え方や視野、価値観までを広げてくれるものでした。

どんなに辛く落ち込んだ時でも支えてくれる人がいることの幸せ

留学生活の中では困難なこともたくさんあったし、泣いたこともたくさんあります。しかしそれ以上に、私がカナダで歩んだ1年3カ月には数えきれないほどの人たちの支えと愛、祈りがありました。一人で旅立った留学でも、人間一人では何もできません。人に支えられ、人を支えて、そしてやっと乗り越えることができるのだと実感しました。

日本を飛び立った時は、正直、英会話に関しても自信満々な部分がありました。ところがカナダで現実を目の前に突き付けられ、自分の中のプライドもガラガラと崩壊。情けなさやみじめさが一気に襲ってきました。しかし、私がいくら落ち込んでも、話ができなくても、そこには私を認めて、理解してくれようとする家族や友達がいました。苦しい想いをしながらも、私は彼らの存在によって幸せを感じることができたのです。

日本を出てから1年3カ月、私は大きく成長して帰ってくることができました。英会話はもちろんですが、どんなに異なった意見の持ち主でも、相手の意見をしっかり最後まで聞いて議論する力がついたことは自分でも大きいと思います。また、出て行きたい気持ちばっかりだった日本と言う祖国も、海外に出たことで誇るべき価値のある国だと思えるようになりました。そして何より、留学を経て、私は本当に大切にしたいものが増えました。こればかりは一言では言い表せませんが、これからの人生で守っていきたい多くのものに巡り合うことができたと感じています。

留学と言うのは人によって国も期間も異なります。留学生の数だけ、誰も経験したことのない、その人だけの留学生活があり、新しい発見と新しい自分に出会えチャンスがあるのだと思います。世界は広いです。誰もがダイヤモンドの原石。これから留学を目指す方たちには、自分の可能性を最大限生かして、怖がらずに世界を見てきてほしい、とエールを送りたいです。
Ask and it shall be given to you; seek, and you shall find; knock, and it shall be opened unto you.(Bibel:求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見い出さん。門を叩け、さらば開かれるであろう)

そして今、新しい想いを胸に

「想い」――あなたにはどんな思いがありますか?
思えば、私がカナダへ飛び立ったのは、世界地図で日本という国を見たときに、この小さな国で一生を終わりたくない、もっと世界を見て、触れて、たくさんの人と出会いたい!という一心からでした。しかし留学中の出会いと経験が、日本は「出たい場所」から「帰ってきたい場所」へと変えてくれました。

そして今、私の夢は貧困に苦しむ子どもたちのために働く国際ナースです。実は先日、エストレリータのサポートを利用させていただいたご縁で、私は「海外生活サプリ」先輩メッセージに登場予定のNPO法人TABEL FOR TWO Internationalの事務局長・小暮真久さんのインタビューに同行させていただきました。貧困の中にある子どもたちの支援というものを軸にしているTABLE FOR TWOの活動は、私の夢に本当に近いもので興味深く、著書「20円で世界をつなぐ仕事」を読ませていただいた後は、より一層小暮さんの思いに共感するものがありました。

実際に小暮さんにお会いしてお話させていただいたところ、「社会に役立つ何かをしたい」「国や組織の壁を越えて物事に取り組みたい」という想いが、小暮さんの全身からキラキラと伝わってきて、本当に刺激を受けました。一言一言に熱い想いをこめて、真剣にそして力強くお話ししてくださる小暮さんは、どこか希望に胸を膨らました少年のような目をしていて、それがとっても印象的でした。

この職だ!これが自分のすべきことだ!という想いを持って活動されている方は、無の状態でも自分で道を切り開く力、新しいものを見つける力があると思いますが、小暮さんはそこに喜びと希望を見出して活動をされています。お話をさせていただいたことで、私自身も自分の仕事に対して熱い情熱と喜びを持ち、キラキラと働きたいと思いました。何かActionを起こすのは難しいことですが、その熱い想いがある限り、決して不可能ではありません。最初は無でもそこからの可能性はすべて自分自身の中にあるんだということを、今回の小暮さんへのインタビューと留学経験において教えていただきました。「想いを大切に」。小暮さんにインタビュー後頂いたメッセージです。このメッセージのおかげで私の「想い」、私だけの「想い」を大切に歩もうと思いました。

自分の夢に近い仕事をされている方のお話を生で伺うという体験は、本当に貴重で素晴らしいものでした。この機会は、エストレリータとの出会いがなければ、恵まれなかったものだと思っています。カナダに留学中の時から就職のサポート、個人相談、将来の設計についてまでも、いつも親身になって考えてくださったエストレリータの方々には心から感謝しております。

夢というものは、自分の夢にこめる「想い」を忘れず、大切にして歩むことで、その夢の実現へも一歩近づくものなんだと思います。ここで今、全ての出会った人と支えてくださった人たちに感謝したいです。ありがとうございました。私は私の想いを胸に歩んでいきます。

林原詩苑さん
名前 林原 詩苑さん
渡航先 カナダ・バンクーバー
渡航期間 2008年7月~2009年11月
渡航目的 語学力の向上・異文化交流