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渡航者体験談 / vol.06

“自分を信じること。そこから全てが開ける”。海の向こうの友人達から教わったこと

インテリア会社でデザイナーとして働いていた私。輸入品を扱っていたために、日頃から海外のデザイナーと会話をしたり、英語で発注業務を進めなければならないことがたびたびありました。ところが、英語が得意でないわたしはいつも四苦八苦。間違った商品を輸入してしまったこともあり、悪戦苦闘の毎日でした。

しかし、一番悔しかったのは、せっかく世界のデザイナーと交流できる機会がありながら、そのチャンスを自分でつぶしてしまっていること。自分の幅を広げるためには、英語力が必要不可欠だと思ったのです。そんなとき、私は学生の頃からいつかは留学したい、という気持ちを抱いていながらも、なかなか実現できずにいたことに思い当たりました。それに気がついたとき、わたしは目覚めたような気持ちに。「いま行かなければ、後できっと後悔する。」そう自分に言い聞かせながら貯金準備を始め、1年後に仕事を退職し、カナダ・トロントへと飛びたちました。

何でもできる、だからこそ目標をしっかり立てることが大切なワーホリビザ

トロントは、金融・経済など産業基盤が発達し、文化面では世界クラスの博物館や美術館があるほか、国際フェスティバルも開催される、世界を代表する移民都市のひとつです。アメリカが好きだったので、はじめは学生ビザを取ってニューヨークに行こうと考えていました。しかし、チャンスがあれば現地のインテリア会社で働きたい、そうすると労働が制限される学生ビザは駄目。だからワーキングホリデービザのあるカナダ、中でもこのようにニューヨークに似た環境を持つ大都市・トロントに決めたんです。

ところでこのワーホリビザですが、観光・語学・アルバイトから就職まで、使い方の自由度がとっても高いビザ。そのぶん滞在目的もブレがちで、自分なりの目的意識を明確に持たないと失敗するな、と思いました。そこでわたしは「現地のインテリア会社で働く」ことを最終目標に掲げました。まずは基礎力をつける為、3 カ月間語学学校に通いながら、放課後と週末にアート系イベントのボランティアスタッフをしました。はじめは指示が聞き取れず迷惑をかけてしまったり、大変な思いもしましたが、既に流暢な英語をしゃべれる日本人の友人に助けてもらいながらどうにかクリア。不安が消えてしまえば、カナディアンと会話し放題、アートにも関われるとあって、私には一石二鳥の環境でした。

続く2か月間は、ビジネス学校に通学。このビジネス学校、卒業後のインターン紹介先としてインテリア会社があったんです。カーテンやソファー、クッションなどインテリア小物の装飾をオーダーメイドで手掛けている会社で、経験者採用のみという条件でしたが、日本でインテリアデザイナーをしていた私はバッチリ応募資格あり。このインターンを足がかりにインテリア会社で働きたい…そんな想いから選んだ学校でした。

入学したその瞬間から、もう頭の中は卒業後のことばかり(笑)。入社までに会話力をアップさせようと、夜は地元客の多いレストランでウエイトレスをしました。そして卒業後、私は無事にインテリア会社の面接に受かり、2 か月間の有給インターンを行うことができました。その間は、毎日がアピールの機会。業務をこなす傍ら、日本から持参した作品集を見せて、「私はここでこのまま働きたい」と訴えました。

その甲斐あってか、その後もアシスタントデザイナーとしての雇用が決定。ビザが切れるまで、合計半年間勤めさせてもらうことができました。でも、実はこの会社、ちょっと変わっていたんです。インターン中からそのことには気がついていましたが、まさかそれが後々あんなことになろうとは…。

えっ、アシスタントのわたしが日本代表なんですか!?

カナダ自体、“人種のモザイク”なんて言われるように移民が多い国ですが、この会社、カナダ、フランス、イタリア、ドイツ、スイス、ポルトガル、インドなど…なんと社員の出身国が完全にバラバラ! 価値観、宗教がバラバラなので、毎日が意見の熾烈に飛び交う大弁論大会です。そんな中、日本人は私だけ。「日本での経験を活かしつつ日本的な発想の提案をしろ」と求められ、もう完全に日本代表的な扱いに。早口にスラング、意味不明なジョークなんかが当たり前のように飛び交う環境で、初めはわたしの会話レベルでは聞き取れないことも多く、話題についていくのに一苦労でした。

「会話にならない」「アユミは無口すぎる」と怒られ、悩む日々。でも、これは“自分を信じて選んだ道”、ここまできたんだ、頑張らなければ何も開けない…。私はくよくよするのを辞め、帰宅後にラジオをとにかく聞きました。それは早口やスラングとジョークが混じった会話に慣れるため。加えて、英語で意識して無駄話をするようにしていると、徐々に会社でもしゃべれるようになりました。嬉しかったですね。だって、会話についていけるようになって気がついたのですが、各国の文化や発想から繰り出される意見やセンスの交換、ぶつけ合い…これこそ、私が求めていた、海外のクリエイターたちとの交流そのものだったんですから。それぞれが各々のフィーリングを信じた意見を出してくる中、わたしも日本人としてどんな発想が出来るかを常に考える、それは本当に今後のデザイナー人生の大きな糧となる貴重な経験でした。

"自分を信じること”の大切さ

もちろん、インテリア会社で働けるようになるまでには、大きな目標を立ててしまったと自分の英語力に落ち込む日も多々ありました。ビザの残りの期間が気になり焦ることも。しかし、そんな中私の背中を押してくれたのが一足早く海外で働いていた友人達の言葉です。

“自分のフィーリングを大事にすること。自分を信じること。そこから全てが開ける。”

彼らも初めは何の保障もないまま、ただ自分が信じた道を行く為、海外へ飛び出して行った人達です。日本にいた頃は、まさか海外で本当に働けるとは思いませんでした。それが社内のショールームの全面改装を手がけたり、展示会に出す作品のデザインなど、最終的には私の実力が認められ、とても大切なポジションを担わせてもらえたのですから。

現在は日本に帰国し、またデザイナーとして再就職しようと動き出しています。英語に対する気負いもありませんし、見えてくる風景も変わりました。こうして帰ってきて渡航前と同じ場所に立ってみると、自分がどれだけ大きくなれたかが分かります。

今、留学やワーホリをしようか悩んでいる人がもし居たら、一言伝えたいことがあります。それは、経験するもしないも人生であり、どちらを選ぶも自分次第、だけど、「You only live once.」。一度きりの人生です、可能性を感じたら、臆病にならず、自分を信じてぜひトライしてみてください!

(2009年5月 千葉にて)

林田あゆみさん
名前 林田 あゆみさん
渡航先 カナダ・トロント(ワーホリ)
渡航期間 2008年3月末~2009年3月末
渡航目的 ビジネスで使える会話力を身につける(できれば海外のインテリア会社で働きたい!)