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先輩メッセージ / Message12:日本ビーチバレー 朝日健太郎選手

では海外遠征を重ねる中で、ご自身に変化はありましたか?

やはり日本人でよかったな、と思うようになりましたね。食事もそうだし、気遣いもそう。いろんな部分で日本人の真心を感じるようになりました。他の国の人に気遣いがないというわけではないですよ。でも日本人は、特に気遣いを大切にする国民性だと思います。でも本当は、そんな気遣いは、勝負には必要がないものなのかもしれませんね。世界を舞台にした勝負では、相手のことなんて構っちゃいられないものだし、日本人は世界に出ると力が発揮できないとか、そういうことも言われてしまう。でも逆に僕はそういう国民性を踏まえたうえで、勝ちたいと思っています。何と言うか、日本人らしく勝ちたいです。

日本人らしい勝ち方とは?

日本人は、うまく組み立てて勝とうとするんです。東ヨーロッパの選手なんて、筋肉隆々で体も強い。彼らは勝負事にはすっごく純粋で、スパッと勝ちを獲りに来る。それでも僕は、うまく組み立てていく日本式のやり方で勝っていきたい。ヨーロッパ、南米、ロシア、イタリア、フランス、ドイツ。本当に国によって性格が違う。各国の選手に聞いてみても、きっとみんながそれぞれ自分たちらしく勝ちたいと言うはず。国際戦には、そういう戦いもありますよね。技術だけじゃない、バレーのうまさだけじゃない。世界で戦うと、国というものが間に入る。そしてそこを克服しないと、いつまでたっても勝てないんです。

そういう違いを肌で感じるようになったのは、海外に出て行ったおかげですよね。

本当にビーチバレーのおかげですよ。インドアではわからなかったことです。インドアのバレーでは、対戦にお国柄がそんなに影響してきません。と言うのも、インドアは人数が多いので、ダイレクトに相手とやりとりする接点が少ない。単純に考えても1/6だし、相手に打つよりも味方にパスすることのほうが多いんです。それに試合の1時間2時間ぐらいしか、相手のチームとの接点はありません。でもビーチバレーの場合は、もうコート外のマネージメントから試合が始まっているんですよ。抽選があって、コートの取り合いがあって、コートの中にいろんなチームがいて、世界が凝縮されていて。いろんな駆け引きをしながら試合が行われているんです。試合前にあんまりモタモタしていると、どんどん練習場所もボールもなくなっちゃうんですよ。「あいつらすぐボールを持っていくから気を付けろよ」とか、もう、そんなレベルから始まります。ボールを貸してあげたのに、平気で返さないチームもいますからね。

国際試合と国内試合でやっぱりモチベーションは変わりますか?

やはり日本人同士と世界の大会はまったく違いますよ。まずスイッチが違います。相手チームに負けたくないという思い以上に、日本人としての誇りとして負けたくないと思う。完全アウェーで戦っている場合は、本当に背中に日の丸が乗っかっている気分ですよ。

でも逆にここまで力をつけると、国内試合では負けられないというプレッシャーもありそうですね。

それはありますね。足元をすくわれないようにしないと。やはり後輩たちは、どうにか朝日・白鳥チームに勝とうとしています。自分たちがうまくなるための練習じゃなくて、僕たちに勝つための練習をやっていますから。でもそうやって全体がレベルアップしていければいいですよね。

最近ではスポーツ留学を志す若者も増えていますが、そうした若者が海外に行くことの意味はどこにあると思いますか?

やはり日本人らしさの再確認ですよね。こういう言い方はおかしいかもしれないけど、海外に出ると、日本人って優秀だなって思っちゃう。日本人ってすごいな、そう思う瞬間が必ずあるんです。だって海外は不都合、不便が多いんですよ。たとえば日本の電車は1分狂わず来ますよね。でも向こうでは電車は遅れるのが当たり前。時間通り来たと思ったら、前の電車だったりする。日本人は、電車がちょっと立ち往生するだけで舌打ちしたりするけれど、一度海外に出たら、そんなこと絶対しなくなりますよ。

正直、僕も言葉はその土地に根をおろさないと身につかないと思っています。3~4カ月いて、やっと耳がなれるくらい。だったらもっと他のことを学んだ方がいい。そうはいっても、海外で日本の良さを無理に探す必要はないですよ? 外国を経験すれば、自然と日本ってすごいんだなってわかると思う。

コミュニケーションを取る上で、言葉は重要ではないと思いますか?

言葉があれば楽しさは2倍になるけれど、なくても十分やっていけます。あとは、そこに踏み込む勇気さえあれば。ありきたりですけど、やっぱりそうなんですよ。それから留学するのであれば、日本のコミュニティには入らない方がいいですよね。

朝日さん自身、輪にどんどん飛び込んでいったのですか?

ええ。海外遠征中は、外国の選手の家に泊まったりもしましたね。それから「練習ゲームやろうよ」って、どんどんアポをとったりもしましたよ。

現在、ビーチバレー界を牽引されている朝日さんですが、今後日本のビーチバレーをどうしていきたいと思っていますか?

やはり若い子たちに、もっとビーチバレーをやってもらいたいですよね。それが日本のビーチバレーのレベルアップにつながると思っています。今後世界で戦っていくには、ある程度国内でも競争が必要ですから。今はそのために、ビーチバレーをやるコートの数を増やしたり、子供向けのスクールを開いたり、ちょっと生活の中でビーチバレーを身近にしていく活動をしているところです。そして、ゆくゆくは日本代表がオリンピックで金メダル、みたいなね。そういうピラミッドを作って行きたいです。

では朝日さん個人としての目標は?

現在の状況をを乗り越えることですね。逆を言えば、この年齢でこの状況に立てるのは、楽しいことなんですよね。コートで練習しているときはキツイし、早く家に帰りたいとも思う。2002年はこういうのが積み重なって、フラストレーションがたまってバレーをやめました。でも一度自分はそういうのを経験して、今度はしっかり真正面で受け止めて、乗り越えたい。2002年には転向と言う答えをだしたけど、2010年は転向じゃない形で乗り越えようと思います。

では最後に。海外に行きたくても足を踏み出せない若者に、何かメッセージをいただけますか?

まず海外に行ってみてること。海外で何をするかも大事だけど、行くという行動を起こすことにも意味があると僕は思います。そして海外に来た時点で「何となく海外に来ちゃったよ」じゃなくて、「海外によく来たよな。スゴイじゃん」って、自分に言ってあげればいい。「自信を持ちなさい」とよく言われるけれど、それでいいんです。プラスの材料を勝手に自分にあげちゃえばいいんです。何も優等生な模範解答なんて必要ないと思います。「何も理由がないけれど海外に来ちゃったよ。オレすげぇな」くらいでいい。理由は後からついてくる。僕はそう思います。

インタビュアー:株式会社エストレリータ代表取締役社長:鈴木信之

ライター:室井瞳子

PHOTO:堀 修平

朝日健太郎ブログ

朝日選手の近況はブログでチェック! ビーチバレーの大会や遠征の様子はもちろん、朝日選手が参加したイベントや講演の様子、プライベートのことまで、詳細に綴られています。朝日選手の人柄がにじみ出る、ほのぼのとした語り口も魅力です。

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